Jey
[糸の使用感]
ワイルドシルクの糸
手渡された紙袋を覗き込むと、ふっくりと艶めく、見たことのない生き物が眠っていた。そっと手を伸ばし綛をすくいあげようと触れた途端、ぴぴっと糸を引き攣らせてしまう。染色作業で荒れた指先を十分に保湿し、心を鎮めて綛を慎重に取り出す。ようこそ我がアトリエへ。
その軽さにまず驚く。そしてハリ。1本1本に主張のある表情。
少量ずつ巻き取り、さっそく庭に咲いている薔薇の花びら、枝、葉で染めることにする。もつれそうになる束をゆっくり丁寧に。動作を繰り返しているうちに、だんだんと糸との対話がスムーズに運びだす。
そして洗いから染め、媒染と、時間を経て染め上げられた色のなんと美しいこと。染色前の表情とは少し変わって引き締まり、自然の美を体現しているその姿にしばし見とれる。薄化粧をしてお澄まししているようにも見え、思わず笑みが溢こぼれた。
さあ、次はどの植物で染めようかと糸の束を撫でながら思う。野生の蚕の素晴らしさとともに、この製糸技術がどうかこの先も継承されていきますようにと。